射出成型品をMarkforgedに置き換えられるのか?

2021.6.24

検証

先日お客様からいただいた依頼が、3Dプリンタの活用場面としてとても面白かったので取り上げてご紹介したいと思います。


射出成型 vs Markforged



樹脂の3Dプリンタの主な活用場面として、①形状確認試作、②機能試作、③治具、設備、④最終製品が挙げられますが、これまでの使われ方の多くは①形状確認や②機能試作でした。その大きな理由の1つは治具や最終製品で使うための強度が不足していたことによります。

Markforged(マークフォージド)であれば、カーボンファイバーを出力できることからアルミ並みの強度を出すことができ、上記の問題をクリアできると考えられます。しかしながら、コスト面で従来の射出成型品に対してメリットが出るのかどうか、皆さまも疑問に持たれているところかと思います。

その答えは「作る数量による」というやや曖昧なものになります。

数量が数千~数万といった非常に大量になる場合には、やはり従来通り金型を作った方が1個当たりの単価は安くなりますし、時間的にも射出成型の方が速くできます。

では、作る数量が数個~数十個であったらどうでしょう。その場合はもしかするとMarkforgedの方が安くできるかもしれません。

射出成型とMarkforgedどちらが安いかは作るものの形状やサイズによって変わるため一概には言えませんので、具体的に検討されたい方は専用フォームよりお問い合わせいただければと思います。

ベンチマークテスト



今回、あるお客様から、射出成型品をMarkforgedに置き換える相談を受けまして、実際に造形したものを試験、量産、現地で使用していただくところまでを行いました。相談内容は「避難用はしごを巻き上げるためのハンドルを3Dプリンタで作りたい」というものでした。


3Dプリンタを検討された理由は下記になります。

・はしごと一緒に納めたハンドルが長い年月を経て壊れたり持ち主が失くしてしまったりしていて提供しなければならない場面がある
・対象となる避難用はしごの型式が古く製造中止になっている
・金型ももう保管していないためこれから射出成型で作るのであれば金型から起こす必要がある
・ハンドルは必ず必要になるものではなく需要も読めない(いつ何個注文が入るか分からない)

確かにこのような条件であれば、3Dプリンタのメリットが出る可能性が高いです。

ご相談を受けて弊社ではまず、そもそも強度や精度などお客様のご要望を満たすものがMarkforgedで作れるのかを検証しました。
実際に出力したハンドルを使用してはしごを巻き上げる試験を行っていただいた結果、強度も嵌合も問題ありませんでした。
数十個作るレベルであれば射出成型よりもMarkforgedの方がメリットが出るという点、依頼から数日でお求めの数量を納められる点からMarkforgedでの製造を選択いただきました。

課題



今回取り上げた例は避難用はしごを巻き上げるためのハンドルという安全面ではそれほど重要ではない部分への適用であったため、問題無く採用いただくことができました。しかしながら、例えばはしごそのものの部品に3Dプリンタ品を適用しようとなると、いくら強度が高いといっても様々な強度試験、疲労試験、認証機関への資料提出などが必要になり、そう簡単ではないとお客様もおっしゃっていました。

3Dプリンタ自体が最近出始めた技術であり、材料認証の問題等、規格の標準化はまだまだ発展途上です。
そのため、現時点で射出成型品を3Dプリンタに置き換えるとしたら、ターゲットとしてそこまで安全面等の要件が高くない部分を選択するのが現実解だと思われます。

お問い合わせ



今回造形に使用した3Dプリンタ「Mark Two」の情報はこちら。
 Markforged Desktop Series : Onyx One/Onyx Pro/Mark Two​


具体的に自社に3Dプリンタを適用できるのか相談してみたいという方はお問い合わせフォームよりご連絡ください。


もう少し事例など見てみたいという方は3Dプリンタ選定コンシェルジュサービスのページをご覧ください。