【管理者向け】失敗しない!設計者CAEの導入法とは?

2024.9.5

皆さま、こんにちは。APIスペシャリストの柴田です。
以前にもAPIに関する記事やセミナーを開催しましたが、見ていただけましたでしょうか?

【ブログ】
 ・SOLIDWORKSをカスタマイズ!~APIで自動化したら仕事はもっと楽になる
 ・SOLIDWORKSをカスタマイズ!~簡単な開発にトライしてみよう

【セミナー】
 ・SOLIDWORKS DAY 2024「あなたの業務をもっと楽にする SOLIDWORKS API 活用」
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「あなたの業務を楽にするSOLIDWORKS APIシリーズ」として今後も情報を出していきますので、ぜひお役立てください。

さて、今回は「設計者CAE」の導入をテーマにお話していきます。設計者CAEについてに説明が不要な方は、2章「設計者CAE導入のためのステップとポイント」から読み進めてみてください。

設計者CAEとは何か

設計者CAEの概要

そもそもCAE(シーエーイー)とは「Computer Aided Engineering」の略で、ざっくり言えばコンピュータを使った解析や、そのためのツールのことを指します。かつては解析といえば手計算をしていましたが、コンピュータの普及により効率良く解析を行えるようになりました。

最近では設計の最適化を図り製品開発サイクルを効率化しようと、設計の初期段階において設計者がCAEを活用しようとする考えが知られてきています。これが設計者CAEです。

設計者CAEの役割と専任者CAEとの違い

設計者CAEの主な役割は、製品設計の最適化と時間短縮です。設計を終えてから解析に回してミスが見つかると、痛い手戻りが発生してしまいます。設計段階で解析をしておけば根拠のある製品評価をすることができ、早期改善に繋げることができます。

設計者CAEと専任者CAEの違いは、文字通り誰が解析を行うかということです。設計者CAEは設計者、専任者CAEは解析専門のエンジニアが行います。また、専任者がハイエンドなツールを使うのに対し、設計者は機能を絞った扱いやすいツールを使うこともあるでしょう。

<設計者CAEと専任者CAEの違い>
設計者CAE専任者CAE
実行者設計者解析専門のエンジニア
使用ツール必要な機能に絞ったツールハイエンドツール

設計者CAEの導入に必要な人材と技術

設計者CAEを導入するには、専任者ほどではないにしろ、解析に関する基本的な知識を持った設計者が必要になります。

解析はコンピュータがしてくれるとはいえ、その結果を適切に解釈したり、条件設定が正確でないことを見抜いたりする技術が求められます。ツールの操作方法の習得は言わずもがなです。

設計者CAE導入のためのステップとポイント

設計者CAEの一般的な導入方法

一般的には、設計者がCAEツールの基本的な操作方法を覚えながら、解析に関する知識を学んでいくところから始まります。

解析には色々な種類がありますが、構造解析から始めて流体解析や機構解析、電熱解析など製品開発に必要なものを順番に習得していくのがよいでしょう。

弊社ではSOLIDWORKS Simulation関連のトレーニングをご用意しています。興味のある方はこちらをご覧ください。

 SOLIDWORKS Simulation 関連トレーニング一覧

設計者CAEの導入に必要な要素

設計者CAEを導入しようと思ったら、どのようなステップを踏むと失敗しないでしょうか。
ゼロからスタートすることを想定して、まずは一般的な方法をご紹介します。

Step1.ニーズの評価

開発している製品に対して必要な解析はどのような種類のものかを明確にしましょう。製品の強度を解析するなら構造解析、空気の流れを解析するなら流体解析が必要など。そして解析によって改善したいポイントも明確にしておきましょう。

Step2.CAEツールの選定

使用中のCADと互換性のあるもの(SOLIDWORKSユーザーならSOLIDWORKS Simulationなど)が候補に挙がると思いますが、業界によってはデファクトスタンダードがある場合もありますので(例:線形解析ならNASTRAN、 非線形解析ならAbaqus 、流体解析ならSTAR-CCM+ など)先に調べておきましょう。

Step3.使用者の教育

設計者にどこまで知識があるかにもよりますが、そもそも解析の考え方を学んだり、ツールの使い方を覚えたりする必要があります。独学するよりも講習を受ける方が短期間で確実に習得できるのでオススメです。

Step4.スモールスタート

まずは小規模なプロジェクトから設計者CAEを導入していきましょう。解析結果を分析し、それを元に設計変更して再度解析にかけます。このサイクルを上手く回せたら大きなプロジェクトへ広げていけば、会社全体の業務効率化に繋がります。

Step5.設計プロセスへの統合

CAEを設計プロセスに組み込み、設計と解析の連携を強化します。また、解析結果を設計変数に組み込み、デザインレビューに使用することで設計の根拠になります。


以上のステップを踏むことで、設計者CAEの導入がスムーズに進み、設計プロセスの効率化と製品の品質向上が期待できます。

設計者CAEを確実に導入するカギは“自動化”

ここまで一般的な設計者CAEについてご紹介してきました。この内容なら導入できそうだ、と思われましたか?でも早まってはいけません。

導入しようとしたけれど、なかなか社内に定着しないというパターンを数多く見てきました。それは一体なぜなのか、定着させるにはどうしたらよいのかをお伝えします。

設計者CAEはなぜ定着しないのか

設計者に「社内でCAEを使っていますか?」と聞くと、「はい」と答える人が多いと思います。更に深堀して「誰がCAEを使用していますか?」と聞くと、「解析専任者に依頼して実施しています」と答える人もいます。

解析専任者に解析を依頼しているということは、CAEツールは導入されているけれども、設計者CAEが普及しているとは言えないのではないでしょうか。

CAEは設計者が使用してこそ最大の効果を発揮します。しかし実情では設計者がCAEを使用しても途中で頓挫してしまい、解析専任者に頼っているケースもあると思います。

念のため明記しておきますが、解析専任者を否定しているわけではありません。解析専任者には専門家だからこそできる難しい解析を実施していただきたいと考えています。

設計者の主張

さて、設計者が解析専任者へ都度解析依頼をしている状況では設計時間の短縮に大きくは貢献できていません(信頼性向上には繋がっていると思います)。

設計者CAEを社内に普及させるにはどうすれば良いか、私の個人的な見解をお話しいたします。

私は40年以上にわたり機械系CAEシステムの研究開発にかかわってきました。その経験から、設計者がCAEを使用しない(したくない/できない)理由は以下のように考えています。

・忙しくて時間がない

設計者の多くは設計にCAEを必要だと考えていません。なぜならばCAEを使用しなくてもこれまで設計できているからです。また、CAEは手間と時間を必要とします。CAEを実施することで今までの設計時間に、解析する時間が加算されるからです

・専門知識が必要

CAEを実施するには工学的知識、FEM(Finite Element Method:有限要素法)の知識、CAEツールの知識が必要となります。現在はそういった知識が不十分でもCAEを実施できるツールがありますが、知識がないと解析結果が正しいかどうか判断することができません。知識を習得する為の時間が必要で、外部講座等を受講するとしたら費用が発生することもネックになるでしょう。

・部門長や経営層の理解が得にくい

従来の設計にCAE実施時間が加算されるので、設計期間は少なからず遅くなることになるのは当然のことですが、これが理解されない場合が往々にしてあります。工学的知識、FEMの知識、CAEツールの知識等に時間と費用が掛かるものです。上長の皆さまにおかれましては、なにとぞご理解くださいますよう私からもお願いいたします。

設計者CAEがもたらすメリットと求めるツールとは?

効率化とコスト削減

設計者CAEが普及すれば、以下のような効果が期待できます。

  • 設計者がCAEを続けることで設計変数(設計を決定する主要なパラメータ)を定められる
  • 設計変数があれば流用開発で製品に十分な強度があることが、ある程度確認できる
  • 試作/実験の回数削減ができる⇒ゼロにすることはできなくても、回数を減らすことが重要



試作/実験の回数削減ができれば、開発リードタイムの短縮、手戻り削減が実現できます。

設計者CAEが求めるツール要件とは

設計者が違和感なく使えるよう、以下のような要件が求められます。

  • 3D CADとの連携性(CAD-CAE統合システム)⇒3D CAD上で解析の結果を確認できるメリットがあります
  • 操作性(使い勝手の良さ)
  • 試作/実験の回数削減ができる⇒ゼロにすることはできなくても、回数を減らすことが重要
  • 解析結果の比較検討のしやすさ



SOLIDWORKSにアドオンされた製品「SOLIDWORKS Simulation」が上記の要件を満たしています。

★SOLIDWORKS Professional以上をお使いの方はSOLIDWORKS Simulation Xpressを無料でお使いいただけます。気になった方は以下の動画をご覧ください。(※2020年12月に実施したセミナーのアーカイブです)

設計者解析のススメ まずはここから!入門編
SOLIDWORKS SimulationXpressによる はじめての強度解析

このセミナーは全3回のシリーズです。続編をご希望の方は以下のボタンよりお申込みください。

続編「SOLIDWORKS Simulationによる強度解析
・製品版による強度評価(Vol.2)
・操作レバーの強度評価(Vol.3)

SOLIDWORKS Simulationをそのまま使用して解析を実施しても良いのですが、カスタマイズして自動化することで更に使い勝手が向上します。

★自動化が気になった方は以下のブログをご覧ください。

 SOLIDWORKSをカスタマイズ!~APIで自動化したら仕事はもっと楽になる

 SOLIDWORKSをカスタマイズ!~簡単な開発にトライしてみよう

設計者CAEの実現に向けて改善できそうなこと

設計者CAEが実現できていない理由はいろいろと考えられますが、以下の点は改善できるのではないでしょうか。

解析に関する知識不足の為に適切なツールの選定ができない

中~長期に渡りサポートしてもらえる販売代理店の存在が必要です。初期導入するべきツールの提案に耳を傾けてみてください。

CADとCAEが連携した設計ルールを提案してもらいましょう。

以前、CAEを立ち上げようとして失敗したことがある

過去に導入したCAEツールの操作は難しくなかったですか?操作性の良いツールを選択するべきです。

CAD、CAEツールは別々のシステムではありませんでしたか?できればCADと同じ操作性のCAEツールを選択するべきです(CADとCAEが統合化されたツールは違和感なく使用できます)。

工学的知識、CAEツールの知識が不足している

専門知識の不足は、CAEツール導入の初期段階で、CADやCAEの知識が必要な箇所をカスタマイズすることでカバーできます。

ブラックボックス化は良くないことですが、設計者にCAEの有効性を認識してもらい、確実にCAEを普及させるためにはツールを自動化してしまうのがオススメです。

上で述べた、設計者がCAEを使用しない理由の3項目をすぐに解決する秘策はありません。しかし、それに近い改善策として以下のことが考えられます。

多くの設計者は3D CADを使用しています。CADの形状(面、エッジ)に対して、解析で使用する拘束条件や荷重条件を簡単に設定できれば、CAE専用システムを使用することなく(違和感なく)解析を実施できます。(そのためにはCAD-CAE統合システムを使用することです)。

CAE導入の初期段階にCAD-CAE統合システムをカスタマイズし自動実行させることで、ごく自然に設計者がCAEを使用できます。3次元形状に拘束条件や荷重条件を設定しただけで、普段使用しているCAD上ですぐに変位や応力を確認することができるのです。



CAE専用ツールではなく普段使用しているCADで解析実行・結果確認をできれば解析の重要性を実感でき、CAEツールの知識取得にも興味を持ってもらえると考えています。

設計者CAEによる製品品質向上のご提案

設計者CAEの普及は一朝一夕に出来ることではありません。社内の(部門長、経営層が理解した)体制づくりや、工学的知識、FEMの知識、CAEツールの知識に関する教育(トレーニング)を継続的に実施できる仕組みが必要です。きっと3D CADを導入したときにも同じように取り組まれたのではないでしょうか。

適切なツール選定と導入、それから中~長期にわたる代理店の手厚いサポートも必要です。とはいえ、それらが揃ったとしても一気に進めると負担が大きくなってしまうかもしれません。スモールスタートがオススメです。

工学的知識、FEMの知識、CAEツールの知識をカスタマイズしてツールに組み込めば、十分な知識の蓄積が無い状態でもスタート可能です。設計者がCAEの効果を実感できれば、自然とそれらの知識の取得も必要だと感じてくれると思います。

もっと詳しい内容に関してはWebセミナーでご紹介いたします。解析の自動化に興味のある方、お時間ありましたら是非ご参加ください。後半ではAPIを活用したカスタマイズについてがっつり解説予定です。

9月19日APIウェビナーバナー

業務を楽にするSOLIDWORKS Simulation と API の活用」

 <前半> 14:00~14:20
 ・CAD-CAEの連携と統合の歴史振り返り
 ・設計者にも使いやすくなったCAEの普及について
 ・自動化する解析の手順を確認

 <後半> 14:30~15:10
 ・SOLIDWORKS、Simulation APIを使った解析手順の自動化
  カスタマイズ解説(マクロに記録~ソースコード修正)
 ・Q&A

<アーカイブ配信中!>
好評につき、本セミナーに加えて弊社主催のイベントSOLIDWORKS DAY 2024にて実施したAPIセッション「あなたの業務をもっと楽にする SOLIDWORKS API 活用」のアーカイブ動画も配信を開始いたしました。この機会に是非お申込みください。

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